Photography
生涯愛することを誓いますか? (2024)
作品形式 :写真
作品サイズ :1000mm×2000m マット紙
子どもは、両親の愛の結晶が目に見えるかたちとして生まれ、人類の未来をつないでいく尊い存在
私たちはそう信じて疑わなかった。
しかし現実には、日本では近年離婚率が増加し、3組に1組の夫婦が離婚しているという。
それでは、かつて「愛の証」として生まれた子どもは、その後どうなるのだろうか?
両親のあいだの愛が消えても、子どもは存在し続け、そこに取り残される。
では、残された子どもはどう生きていけばいいのか。
この作品タイトルである「生涯愛し続けることを誓いますか?」は、本来は結婚式で牧師が新郎新婦に問いかける言葉だ。
しかしここでは、その問いを「他者に向ける言葉」ではなく、自分自身に向ける言葉として使っている。
あなたは、自分自身を、最後まで愛し続ける覚悟がありますか?
制作背景
私は、家族の形が必ずしも一般的なイメージとは異なる場合があることを感じています。初対面の相手には、その背景を詳しく話すことは少ないため、家族が同じ場所で暮らしている前提で話されることが多く、そのたびに心の中で少し違和感を覚えながらも、特に訂正せずにやり過ごしています。こうした経験は、私にとって家族の在り方や周囲が「家族」をどう捉えているかを考えるきっかけになっています。
また、私は幼少期から一人で過ごすのが好きだったため、家族で一緒に食卓を囲むという経験があまりありませんでした。友人の家で家族が笑顔で食卓を囲んでいる光景を見た時、「家族の在り方とは何か」という問いが心に浮かびました。
この問いは私の中で「愛とは何か」というテーマと重なり、現代社会における家族や人間関係の多様性について深く考えるようになりました。特に、子どもという存在が両親の愛の結晶として尊ばれる一方で、愛が形を失い、壊れてしまった関係の中で子どもたちがどう感じ、どう生きているのかということが、私の心に重くのしかかっていました。
現代の社会では、離婚率が高まっていることは避けて通れない現実です。離婚は夫婦それぞれの選択であり、時には必要な決断であることも理解しています。しかし、その過程で置き去りにされる子どもたちが感じる思いについて想像すると、複雑な感情が湧き上がります。愛の証として誕生した命が、両親の愛が失われた後も存在し続けるという事実には、切なさとともに深い矛盾を感じます。
またこの過程で、私は「他人の愛や行動に依存してしまうことの危うさ」にも気づきました。他人の感情や行動をコントロールすることはできませんが、自分自身の感情や行動はコントロール可能です。つまり、誰かに愛されることをただ願うのではなく、自分自身を愛する覚悟を持つことが必要だと悟りました。この気づきは私にとって大きな意味を持っています。
作品タイトル「生涯愛し続けることを誓いますか?」は、結婚式で牧師が新郎新婦に問いかける言葉を想起させますが、ここでは自分自身に投げかける問いとして用いています。他者の愛に依存するのではなく、自分自身をどこまで愛し続けられるのかという問いは、作品を観るすべての人にも向けられています。
この作品は、愛の儚さ、命の強さ、そして自分自身を愛することの大切さについて問いかけるものであり、現代社会に生きる中で私が感じた葛藤や気づきを形にしたものです。誰もが持つ「愛されたい」「愛したい」という根源的な欲求に、新しい視点を少しでも届けられればと願っています。
簡単なラフ画
