Installation Art
全てはあなたのため (2026)

作品形式 :インスタレーション/映像
作品サイズ : 6000 x 7320 mm
素材 :紙、学習机、学習椅子、鉛筆、学習ノート、消しゴム、モニター、スピーカー、照明
SNSの普及により、他人の生活や子育ての様子が身近に見えるようになり、教育に関する情報も以前より簡単に手に入るようになった。多くの人が子どもの将来を真剣に考え、より良い選択をしようとする中で、「子どもはこう育てるべきだ」という考え方が、同調的に醸成されつつある。その過程で、「インターナショナルスクールに行かせれば、英語が身につく」「有名塾に通わせれば学力が伸びる」といった分かりやすい成功モデルが広まり、自身の子どもへの不安の上で成立する商品やサービスが存在感を強めている。
例えば、電車内の広告やメディア空間には、「早期からの英語学習」や「難関大学進学実績」といった言葉が溢れ、「今のままでは不十分ではないか」という感覚が日常的に喚起される。また、YouTubeや書籍など教育をめぐる議論も、多くの場合は保護者や教育者の視点から語られ、実際に教育を受ける当事者である子どもの声は、尊重されているのだろうか。
教育産業が提供しているのは、子どもの未来そのものというよりも、保護者の不安に寄り添った「こうすれば子供の未来は安泰である」という成功の物語であり、その選択をする立場にあるのは、多くの場合その保護者である。
「すべてあなたのため」という言葉は、本当は誰のためのものなのだろうか。
また、本作品ではAIを使用している。現在、大学ランキング上位を占めるアメリカでは、高学歴であっても若者が安定した職を得にくくなっているという状況が指摘されている。その背景には、景気変動など複数の要因と並んで、AI技術の急速な普及により、これまで「高度な専門性が必要」とされ、従来は高度な専門性を要すると考えられてきた知的・創造的労働の一部が代替・縮小されつつある現実がある。その結果、「教育によって将来の安定が保証される」という前提は、すでに一部の国では揺らぎ始めている。日本は現在、少子化による人手不足という状況にあるが、同様の構造変化が将来的に起こる可能性は否定できない。本作においてAIは、「便利な道具」としてではなく、
「教育投資が長年約束してきた安定した未来という物語を、内側から静かに侵食していく存在」として位置づけられている。





